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緊急!ロシア現代劇に興味がある方へ
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    アルブーゾフというロシアの戯曲家の作品の上演があります。 
    現代劇といっても第二次大戦後間もない頃の作品です。 
    ------------------------------------ 

    『私のかわいそうなマラート』 〜三部の対話劇〜 

    作/A・アルブーゾフ 
    翻訳/泉三太郎 
    演出/小笠原 響 

    出演:伊沢磨紀/林 次樹/金子由之 

    2009年3月25日(水)〜29日(日) 

    劇場:東京・両国シアターX(カイ) 
    墨田区両国2−10−14 
    tel : 03-5624-1181 
    http://www.theaterx.jp/ 

    入場料:日時指定・全席自由 
    一般前売り=4500円 当日=5000円 学生=2000円(事務所扱いのみ) 

    前売り・お問い合わせ 
    チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:392-738) 
    名取り事務所 tel&fax 03-3428-8355 

    http://www.nato.jp/ 
    ----------------------------------------------- 

    実はこの作品を日本に紹介したのは私の父でした。 
    これの前に同じアルブーゾフの『イルクーツク物語』という戯曲を翻訳して劇団民芸が上演しロングラン公演(1960年、1968年)となりました。 
    『私のかわいそうなマラート』(1966年)はその後翻訳した3人芝居です。 
    これまた初演は劇団民芸で 草間靖子/伊藤孝雄/米倉まさかね の配役で上演されロングランとなりました。 

    私が産まれる以前の話です。 

    その後約30年間このふたつの戯曲は日本の新劇の劇団の研究生の卒業公演に人気の作品でした。 
    新劇という言葉が死語になりつつある80年代の終わりを最後に上演はされていないだろうと思います。 

    私が9歳のとき、年の離れた姉は女優を目指していました。 
    とある演劇養成所に通っていました。 
    そして、いよいよ卒業公演。 
    演目はなんと『私のかわいそうなマラート』 
    連日姉の友人たちがやってきてはうちで芝居の稽古をしていました。 
    なんといってもその戯曲を日本語に訳した人物が我が家にはいたわけですから、みんなどんな解釈をしたらよいのか、どんな役作りをするべきか、緊張した面持ちで20歳そこそこの若者たちが茶の間へ出入りしていました。 
    こどもだった私はみんなが台詞を言う間にどんどん台詞を覚え始めていました。 
    そして、ときどき姉が台詞を覚えるために読み合わせにつきあいました。 

    それをみた父が私に一冊その戯曲をくれました。 
    「話の内容はまだあんたには難しいかもしれないけれど、でもわかる部分もだいぶあるだろうと思うよ。そんなに台詞をおぼえているくらいなら全部読んでみたらどうかね。」 

    姉の卒業公演のときには第一部の台詞が全て頭の中に入っていました。 
    私の中ではすでに主人公リーカのイメージができあがってしまっていました。 
    戯曲を先に徹底的に読んでからお芝居をみるという体験をそのときはじめてしたわけですが、お芝居というものがどういう風に作られていくのか、ということに少なからず興味を持ちました。 

    それから父のところへ送られてくる上演情報をくまなくチェックし、この芝居が上演されるときは必ず劇場に足を運びました。 
    名のある劇団の公演はまずありませんでした。 
    それでも父からの差し入れのお酒を持ってひとりで劇場を回りました。 
    そうするうちに、お芝居というのは役者だけではなく演出が大事なのだということがわかってきました。 
    おもしろい。 
    同じお芝居が全く違って見える。 
    自分の解釈とも違う。 
    これが演出なのか。 

    しかし残念ながら私が本当におもしろいとおもえる公演はひとつもありませんでした。 
    私が戯曲を読んだ限りではもっとおもしろいお芝居なような気がするのですが、どれもしっくりこない。 
    いまひとつこのお芝居でよくわかっていない部分があったことも事実です。 
    第二次大戦中10代を過ごした若者が戦争を乗り越えて歳をとっていく話なので、こどもの私にわからないことがあったのは当然だと思います。 
    そして、もっとおもしろい芝居な気がするのにそれがみえてこないことにジレンマを感じてもいました。 

    それが久々にプロデュース公演で『私のかわいそうなマラート』が上演されることになりました。 
    当時は小劇団第3世代が全盛期でした。 
    そんな中での地味な演目です。 
    下北沢の駅前劇場で音楽座の俳優で青年座の演出家が演出をする。 
    制作は劇団300の方でした。 
    その組み合わせに私はちょっと惹かれるものがあって少しドキドキしながら観に行きました。 

    受付で挨拶をし、会場に入り少し後ろ目の席を選びました。 
    椅子も簡易椅子です。 
    舞台装置も何にもありません。 
    黒い幕がかかっていてテーブルが置いてあるだけ。 
    しかしながらそのときの感動と感激は忘れることができません。 
    私は初めてこの芝居をみて泣きました。 
    震えました。 
    こんなにおもしろい芝居だったのかと。 
    そしてこんなに哀しい芝居だったのかと。 
    私が今までわかっていなかった台詞の意味。 
    理解できていなかったシチュエーションが全て紐解かれた感じでした。 
    ああ、こういうことだったのか。 
    すごい。 
    演出の力ってほんとうに凄いものだと。 
    この感激を制作の方に伝えたかったのだけれど、17歳だった私は泣きはらして真っ赤になった目でまっすぐ相手をみることもできず。 
    「おもしろかったです。」と握手だけして帰りました。 
    劇場から家まで歩いて帰ったのですが、もう思い出せば出すほど涙が出てきて、そして鳥肌がたって、でもスキップしたいくらい心は軽やかで晴れやかでした。 

    そして、もう寝支度をすませてパジャマ姿になっていた父を茶の間に呼び出しその感激を伝えました。 
    「もう、とにかく観た方がいい。 
    絶対観るべき。 
    びっくりするから。」 
    と熱弁をふるいました。 
    「マラートはそんなに泣く芝居か?俺だって泣いたことはないぞ。」 
    「いや、絶対泣く。泣かされるからとにかく泣かされてきた方がいいよ。」 
    その翌日、父は1人で観に行きました。 
    そして、 
    「いやーよかった。ほんとによかった。俺も初めて泣いた。翻訳した俺もわかっていなかったよ。」 
    と2人であらためてこの芝居のおもしろさを語り合いました。 
    私が父とひとつの作品について語り合ったのは初めてのことでした。 

    それ以後、この作品の公演はみておりません。 

    昨年この戯曲を上演したいと制作の方から連絡があったとき絶対ちらしを送ってくださいね。と念をおしておいたのだがちょっとした手違いがあって今朝とどきました。 
    もう明日からの公演じゃないっすか! 
    今回はどんなだろうとあまり期待せずに期待しているんですが。 

    今回はあの伊沢磨紀さんが主役。 
    観たい。これは観たい。 

    私が最後にみてから23年。 
    このお芝居の第一部は16歳と18歳の2人の出会い。 
    それと同じくらいの年頃にみたわけだけれど、今は最後のシーンの年齢に近いという意味でも今観るのが楽しみなのです。 


    とあまりにも長い思い出話を語りましたが、どうやらチケットはまだまだ余裕があるようです。 
    今回の演出がどうかはまだ観ていないのでわかりませんが、戯曲としてはとてもおもしろい作品です。 
    お芝居が好きで時間の都合がつく方はぜひ。 
    おすすめです。 
    そしてもしご覧になった方はぜひ、ご一報ください。 
    感想をお聞かせいただければ嬉しく思います。 
    私も金曜日のマチネを観る予定です。 

    店の書庫にもこの戯曲がありますので、しばらくの間店で読めるように出しておきます!

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